2026年10月12日月曜日

世界教育モニタリングレポート(GEM Report)2026

世界中で持続可能な開発目標(SDGs)目標4「質の高い教育をみんなに」の達成に向けた取り組みが進められる中、2026年の『世界教育モニタリングレポート(GEM Report)』が発表されました。本レポートは「アクセスと公平性(Access and equity)」に焦点を当て、世界中の教育制度が抱える課題と進展を多角的に分析しています。


今回の記事では、このレポートのフレームワークや最新データをもとに、特にパキスタンにおける脆弱層(障害児、難民・避難民、貧困層など)の学校安全と教育アクセスの現状について考察します。


1. 2026年GEMレポートが示す「アクセスと公平性」の現状

UNESCOが発表した最新のレポートによると、2024年時点で世界全体で2億7,300万人の子どもや若者が学校に通えていません。さらに、紛争の影響が深刻な上位10カ国では、データに表れない不登校児が少なくとも1,300万人以上存在すると試算されています。

パキスタンをはじめとする南アジアやサブサハラアフリカの国々では、単に学校の門をくぐる(就学する)だけでなく、「どのようにして安全に学び続け、修了できるか」という公平性の課題が極めて深刻です。

2. パキスタンにおける脆弱層が直面する複合的な教育・安全リスク

パキスタンでは、自然災害(洪水など)、地域的な衝突・気候危機、経済的困窮、そして不十分なインフラなど、複合的な要因が子どもたちの学校安全を脅かしています。特に影響を受けやすいのが以下の脆弱層です。

(1) 障害のある子どもたち

パキスタンでは、障害児向けの教育インフラやバリアフリー設備が著しく不足しています。インクルーシブ教育に関する法的枠組みや定義の導入は世界的にも広がっていますが、実際の学校現場では、車椅子での通学路や校内の安全確保、障害に理解のある教員の配置が追いついていません。結果として、物理的・環境的な安全が脅かされ、中途退学や未就学につながっています。

(2) 難民および国内避難民

パキスタンには長年にわたり多数のアフガニスタン難民が滞在しており、近年の気候変動による大規模洪水でも多くの国内避難民が生じました。避難民の子どもたちは、身の安全の確保だけでなく、言語の壁、身元証明書の不足、移動に伴う教育の分断に直面しています。非常時における学校の安全(避難所としての機能と学びの継続性の両立)は喫緊の課題です。

(3) 貧困層とジェンダー格差

貧困層の家庭では、学費が無料であっても制服代や通学費などの隠れたコストが重荷となり、早期就労や家事労働のために子ども(特に女子)が通学を断念せざるを得ない状況があります。通学路での安全性の欠如(ハラスメントや暴力のリスク)も、女子生徒の不登校・退学を助長する大きな要因となっています。

3. 学校安全と教育機会を保障するための政策的アプローチ

GEMレポート2026は、単一の政策(いわゆる「万能薬」)で教育からの排除や格差を解決することはできないと強調しています。パキスタンのような複雑な文脈において脆弱層の安全と教育を両立させるには、以下のような多角的なアプローチが必要です。

  1. ターゲットを絞った資金再分配(公平指向の財政メカニズム) 貧困地域や紛争・災害被災地、障害児を受け入れる学校に対して、直接的な補助金や学校給食プログラム、現金給付(Cash Transfers)などを実施し、経済的障壁を取り除くことが有効です。

  2. インクルーシブで安全なインフラ整備 自然災害に強い校舎の建設、バリアフリー化、女子生徒のための衛生設備の整ったトイレや安全な通学手段(通学バス等)の確保が不可欠です。

  3. データモニタリングの強化 紛争地や避難民キャンプ、貧困層における子どもたちの就学・安全状況を正確に把握するため、行政データだけでなく家計調査や人道支援データを活用した包括的なモニタリングが必要です。


パキスタンにおける「学校の安全」とは、単に物理的な校舎の防犯・防災にとどまりません。障害、難民ステータス、貧困、ジェンダーといったあらゆる不利益から子どもたちを守り、誰もが安心して学べる環境を整える「包括的な安全(Inclusion and Safety)」を意味します。

2030年に向けた国際目標の達成には、単一の好事例をそのまま当てはめるのではなく、パキスタン独自の文脈や地域ごとのニーズに合わせた持続的な制度構築と財政投資が求められています。

参考文献

UNESCO. 2026. Global Education Monitoring Report 2026: Access and equity – Countdown to 2030. Paris, UNESCO.

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シンド州の子供たちを脅かす課題と、「学校の安全」を守る多角的な取り組み

本記事では、最近の現地メディア報道の記事をもとに、パキスタン南部シンド州(Sindh)の近年の事例に焦点を当て、子どもたちや教育環境を脅かす多様な課題と、行政・国際機関・地域社会が取り組む多層的な対策について考察します。 Tribune紙、2026年8月27日記事